東京大学非常勤職員の待遇改善の推移(2018~2021)

東職短時間勤務職員部会より、全国大学高専教職員組合の教研集会での報告です。

東京大学非常勤職員の待遇改善の推移(2018~2021)

東京大学教職員組合短時間勤務職員部会

<雇止めの撤廃>(2018.4~)

2004年の法人化に伴い、それ以降雇用される非常勤職員に対して5年の雇用上限が定められて以来、雇止めの撤廃は団体交渉での最重要要求項目だった。聞く耳を持たず雇止めを続けていた当局の対応が最終的に覆ったのは、2017年12月の科所長会議。2018年度から雇用上限は基本的に撤廃されることとなった。2017年度に東京大学教職員組合(東職)が首都圏大学非常勤講師組合と連名で何度も繰り返した団交と、記者会見などでマスコミにアピールし続けたことが大きい。労働契約法の改正(2013年4月施行)により、無期転換申込権が発生する直前のこの時期、東大は法の趣旨に逆行してクーリングオフの期間を延長し、あくまでも無期転換を阻む姿勢を見せていたのだから、画期的なことと言える。これによって無期転換を申請し、実現する者が続いた。

しかし表向きとは裏腹に、恒常的な仕事にも関わらず、雇用限度を定めた非常勤職員の公募や、無期転換に至らぬように5年未満で雇用を切ろうとする事例はその後も続いている。組合への労働相談でもそれに関することは後を絶たず、手放しでは安心できないのが実情である。今のところ個々の状況に応じて交渉するしか術がない。

<特別休暇の有給化 ①看護・介護休暇>(2019.4~)

 雇止め撤廃の後、特別休暇の有給化は切実な要求だった。2018年度の時点では、「短時間勤務教職員就業規則」第34条に定められた「特別休暇」には21項目があり、このうち12項目が無給とされていた。*無給対象の休暇→[産前/産後/授乳等1歳未満の子の保育/生理/保健指導等/業務上負傷疾病(始期から4日目以降)/負傷疾病/骨髄移植提供/子の看護/介護/親族追悼行事/社会貢献活動]。これらの特別休暇は常勤についてはすべて有給。非常勤にはない[結婚]休暇と、[配偶者出産時の子の養育]のための休暇もあった。

 政府の働き方改革「同一労働同一賃金」の理念に照らしても、常勤と非常勤のこの待遇格差は解消すべき、と何度も交渉して来た結果、2019年4月からまず[子の介護]と[家族の介護]のための休暇が有給化された。

<特別休暇の有給化②子の保育等7休暇と結婚休暇等の新設>(2020.4~)

 2020年4月からパートタイム・有期雇用労働法が施行された影響もあってか、2020年度には多くの項目が有給化された。*有給化された休暇→[授乳等1歳未満の子の保育/生理/業務上負傷疾病(始期から4日目以降)/負傷疾病/骨髄移植提供/親族追悼行事/社会貢献活動] さらに、これまで非常勤教職員には与えられていなかった[結婚]休暇と、[配偶者出産時の子の養育]のための休暇が新設された。*[産前][産後][保健指導等]については無給のまま。

<研修差別の解消>(2020.4~)

 東大ポータル2019年10月23日付事務連絡「2019年冬期・Office2016~基礎から学ぶWord・Excel・PowerPoint)」の通知には、この講習会の受講対象者は事務系常勤職員に限られ、「短時間有期、特定有期職員は含まない」と明記されていた。この内容を受け、東職から短時間勤務職員部会からの要望として、「短時間勤務有期雇用職員、特定有期雇用職員も勤務時間中に研修を受けられるようにすること」という要望書を提出(2019年10月31日付)。「短時間勤務有期雇用職員、特定有期雇用職員は今や単なる補助員ではなく、常勤職員と同じく東京大学の屋台骨を支えています。このように教育研修の機会を差別することは働き方改革法の趣旨に反する行為であると考えます」との意見が反映され、2020年4月施行の就業規則には、業務に必要な研修制度が明文化された(第83条2~5)。

<期末手当の新設>(2021.4~)

 2020年4月の就業規則改定で特別休暇の多くは有給化され、新設された休暇もあったが、期末手当については1年後に見送られた。2020年度中に支給を始めるべきだと団体交渉でも要求したが、結局支給は2021年度に持ち越され、2021年7月30日(31日が土曜日のため前日に繰り上げ)に初めての夏季手当が支給された。

 短時間勤務職員に対する支給日及び支給基準は以下の通り。

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夏季手当: 基準日  6月1日  支給日  7月31日
冬季手当: 基準日 12月1日  支給日  1月31日
○支給額
[基準日現在に適用される基本給]×[実勤務時間数]÷6×支給割合
  (実勤務時間数は、基準日前6箇月の期間において所定勤務時間内において勤務した時間数(有給の休暇の承認を受けて勤務しなかった時間を含む。)の合計とする。)
1季あたり0.5箇月相当を支給(年間で1箇月相当を支給)
○支給割合 50/100
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筆者を例にとれば、
・基準日現在に適用される基本給=1,320円
・実働勤務時間数 714時間(2020年12月~2021年5月
1.320×714=942,480 (6ヶ月分支給額)
942,480÷6=157,080   (1ヶ月平均支給額)
支給割合 100分の50
159,720÷2=78,540
という計算となる。実際にはそこから控除額14,633円が引かれ、差し引き支給額は63,907円であった。

常勤の場合、賞与の支給割合は年間(夏季+冬季)で約4ヵ月分。非常勤の年間1ヵ月相当の支給はその1/4。格差はまだ大きいが、それでも一歩前進であることには間違いない。常勤と同等の支給割合を求め、さらに住宅手当や不要手当などの支給も要求してゆくことが今後の課題である。