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昨秋の最高裁判決と通底する本学の非正規教職員差別

労働相談担当副執行委員長  佐々木 彈 (社研)

今ここでドヤ顔してみても詮無いのだが、全国的に大きく報道された大阪医大・メトロコマース最高裁判決について当日、昨秋10月13日夜、私は或る東職同志に私見を語った。そのメールの関係部分を抜き書いてみよう。

何だかんだ言って日本という国と社会では、例えばもし今回のメトロコマースと大阪医大の原告が「中年男性」だったら、司法といえども(っつーか裁判官という害獣であればこそ?)態度が違った可能性大あり、と私は疑っています。これって、日本国内に住み暮らし、雪隠の臭さに慣れて嗅覚の麻痺した雪隠虫の我々には当り前に思えても、健全な嗅覚を持つ諸外国の人たちから見れば「異様」以外の何物でもないのです。
…って、50代♂の私の口からこーゆーことを言わせるこのガラパゴス日本って、どーゆー国なんでしょうね?

とにかく、このニュースはたちまち世界を駆け巡り、海外メディアは一様にそれを「差別」として報道するでしょう。特に「性差別」「男尊女卑」として。国内メディアは滅多にそう明言しないけれど、海外ではメディアにとっても視聴者にとってもそれは自明なのです。

果せるかな翌々日、10月15日の日本郵便判決で、ズラリと並んだ「男性」原告たちを前に、最高裁は何を言い渡したか、既に周知の通りである。大いに不十分とは言え一応、非正規を理由にした過度の差別はいけない、と真っ当に判じたわけである。

そう、つい前々日の女性差別容認クズ判決と併せると、私の「預言」は見事的中。要は最高裁判事センセー方は、「非正規を理由にした差別」よりも「性を理由にした差別」のほうがマシ、と言ったも同然だ。

これで次の2つのことが証明された。

(1) 最高裁はじめガラパゴス日本社会は、やっぱり女性を差別している。男性には、女性よりも多くの権利を認めている。
(2) 男性に認めている権利の水準がより正常で、それを女性には認めないことが極めて異常。

つまり男女平等化するために、男性も今までの女性と同じように冷遇しよう、という方向は誤りで、やはり女性にも男性にも同等かつ今まで以上の権利を認める方向が正しい。T中H蔵流「正社員を無くしましょう」は誤りで、労契法の目指す「非正規にも安定雇用と同一待遇を」という方向が正しい。ちなみに高名(悪名?)な「沖ノ島神社」は、女性を差別しているから世界遺産に認定しない、と脅されて慌てて、じゃあ男子も禁制にしよう、と後ろ向き対応。この方向は間違い。

全国の尊敬すべき労組関係者・労働運動家たちも、労働法学者・法曹人たちも、昨秋の最高裁判決に対し堂々たる権威と威厳のある重厚な論評を数多お出しになっているが、どうもここにお書きしたような「男尊女卑沖ノ島チョンマゲ鎖国」を風刺する言説が過少に失する感を拭えないのは私だけであろうか。

いや、私「だけ」ではあるまい、と人類の叡智・集合知を信じたい。斯く申す私は(私にしては)心技体の最も充実していた20~30代の十数年間、米欧豪3大陸を漂泊した経験から、謂わば世界の標準的な人類が何を思い、どう考えるか、皮膚感覚でピンとわかる。黄金の国あきつしま大和で、その世界標準が何かと通じ難いことも。標準的な人類たちが、日本と言えば、ああ、あの男尊女卑のハラキリ・カミカゼ島国ですね、と変な目で見ていることも。                                              (裏面へ続く)ところで私の儚いドヤ顔(?)も、ここまで。実は何を隠そう、世界の中の日本を彷彿とさせるのが、日本の中の東大である。昭和の学部生時代から断続的にこれまでの半生の実に3分の2を東大で過ごしてきた私の生活経験は、その意味でかなり偏っている。

だから、日本の中で東大と言えば、ああ、あの日本一の男尊女卑大学ですね、と変な目で見られているのが何故なのか、比較的最近まで理解できなかった。入試にしろ教職員人事にしろ、なにも積極的に差別などしていないし、女子学生が少ないのは受験者比を反映しているだけで、他大学で問題になったような入試不正などは私の知る限り東大には無い。にも拘らず、令和の今日なお、東大と言えば男性優位のイメージが抜けないのは、それなりのワケがあったのである。

それを明示的に知覚する契機となったのが、実は昨年の一連の団体交渉だった。パート・有期労働法(旧労働契約法20条)により短時間勤務や有期雇用の教職員にも常勤者との均等・均衡待遇が義務付けられたのに合わせ、東大もパート・有期教職員の待遇をかなり実質的に改善した。そのこと自体は大いに評価に値すると同時に、年来それを要求し続けた東職の努力が実った形とも言えるのだが、現状未改善点として、短勤有期職員への住居・扶養手当の不支給が残っている。

言うまでもなくここで不可解なのは、なぜ「住居」や「扶養」で差別するのか、である。要するに、短勤有期職員は「一家の大黒柱」ではなく、あくまで「被扶養者」として家計補助するに過ぎない立場だから、家賃や子の養育費を自分で払う必要は無いだろう、という謂わば「男性稼ぎ主+有閑マダムの暇潰しパート」的な偏見と差別感情の露呈としか説明のしようが無い。

実際、東大の短勤有期職員の大半は女性で、御家族(夫など)の扶養の範囲で働いている方々も少なくない。もしこれが日本郵便のように、短勤有期職員の多くが男性だったら、大学側は果たして「住居」や「扶養」で差別待遇しようなどと発想したであろうか?

この意味で東大の経営陣は、最高裁の判事たちと酷似の思考回路を露呈している。そしてこれこそが、東大が全国から後ろ指を指され、日本が全世界から後ろ指を指される所以には違いないのであった。

独断をお赦しいただけるのであれば、この際だから最後にもう一つ私見を開陳して筆を擱こう。私の「皮膚感覚」が間違っていなければ、昨秋のような判決をもし自称僭称先進国日本「以外」の自称他称先進国の判事が吐いたら、その一事を以て失職しても何ら驚くに当るまい。同様にもし先進諸外国の大学が、女性が大半を占める短勤有期などの職種を標的に「住居」や「扶養」で差別待遇したら、その一事を以て大学が根こそぎ取り潰されても何ら驚くに当らないのである。こういう差別に対し、日本国内や東大内に暮らし慣れた我々の想像を絶して「超」厳しいのが、むしろ「先進国」たる世界標準だからである。

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