図書館職員部会ニュース 2015年度 第1号(2015.6.30)を発行しました

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人事記録に司書資格や研修履歴の記載漏れ
■A部局で図書館職員(常勤)16名中4名の「司書資格」が記載漏れ
昨年12月、A部局において、大学機関別認証評価のために司書資格を有する図書館職員数を出す必要があり、人事記録から抽出した人数と部署内で把握している人数とを比べた結果、人事記録抽出人数の方が4人も少なく、調査の結果、人事記録の記載漏れであることがわかった。このことについて、部局事務より本部人事部に問い合わせたところ、司書資格の記載がなかった4名(Aさん、Bさん、Cさん、Dさん)について、以下の回答があった。

本部人事部からの回答  ()内は図書館職員部会注記
Aさん(人事記録電子化以降の採用)
履歴書提出時点では取得見込で、大学卒業時に取得となったが、人事記録に記載されなかった。
Bさん(人事記録電子化以降の採用)
履歴書には記載されていたが、人事記録への転記漏れ。
Cさん(人事記録電子化以前の採用)
紙媒体の人事記録(原本)(以下「原本」)から電子媒体への転記の際、原本に司書資格取得年と月までの記載しかなく、日にちの記載がなかったので、転記しなかった。(注:本人が原本を確認したところ、司書資格は一切記載されていなかった。)
Dさん(人事記録電子化以前の採用)
    履歴書に記載がなかったため、人事記録に記載されなかった。
(注:本人は、司書資格取得時点で当時の所属部局事務に証明書類一式を提出した。本人が原本を確認したところ、司書資格取得に関する事項の記載あり。電子媒体には記載されておらず、転記漏れと推察される。)

■他部局でも6名中1名に記載漏れ
 A部局以外の図書館職員6名が自身の人事記録を確認したところ、1名(Eさん)の人事記録から司書資格の記載が漏れていた。

Eさん(人事記録電子化以前の採用)
  3月20日採用。学校卒業前に採用されたため、履歴書提出時点では取得見込。原本と電子媒体の
両方を確認したところ、どちらにも記載はなく、上記Aさんと同じ理由で漏れた可能性あり。

■さまざまな記載不備
 司書資格だけでなく、学歴、研修記録についても、申請したにもかかわらず掲載されていない終了年月日があったり、記載されていない研修があるなど、内容の不備が散見された。

■記載漏れに加えて電子媒体への転記ミスも
 東京大学職員の人事記録は、ある時点(明確な時期は不明、少なくとも1998年よりは後)で紙媒体から電子媒体に移行した。現在更新は電子媒体【図①】で行われているが、移行前までの紙媒体の人事記録(原本)【図②】は本部人事部で保管されている。紙媒体で管理していた時代には、原本の人事記録の他に、部局で写しを管理していたようで、資格取得や研修などの事例が発生すると、部局事務が部局の人事記録(写し)【図③】に記載し、本部人事部へ連絡、本部が原本に記載、という形で、本部と部局で二元管理されていたと考えられる。
 今回全員の確認に使われたのは現在更新されている電子媒体の人事記録であるが、Cさん、Dさん、Eさんは、原本も取寄せて確認した。その結果、Cさん、Eさんについては、原本と電子媒体の人事記録に齟齬はみつからず、原本の追記部分も電子媒体に反映されていることから、原本を忠実に電子化したことが推察された。しかしDさんについては、原本には司書資格取得に関する記載があることから、電子媒体への転記ミスと考えられる。またCさんは、1998年に部局事務が管理していた人事記録の写しも入手しており、その部局管理の写しには司書資格が記載されていた。学歴についても、写しには就職後に修了した学校の修了年月日が記載されていたが、肝心の原本にはいずれの記載もなく、当時部局の写しから原本への反映がきちんと行われなかったことが推察される。

■人事記録の精度の向上と維持を
 今回偶然がきっかけで、22名中5名という極めて高い確率で、司書資格の記載が現在の人事記録から漏れていたことがわかった。しかも2名は資格取得後3~40年が経過しており、その間司書資格なしの職員だったことになる。
司書資格は、図書館職員にとっては重要な資格である。法人化以前は、国立大学(学校)の図書館職員採用試験を経ていない職員については、司書資格を以て「図書館職員定数」にカウントされ、図書館職員の昇格基準が適用された。漏れていた5名のうち4名は試験採用者であったため、幸い司書資格の有無が処遇に影響せず、試験採用者ではない1名についても、係長昇任が早かったため弊害はなかったが、それで見過ごしてよい問題ではない。
 この実態が明るみに出るきっかけが大学機関別認証評価のための調査からだったように、司書資格者数は、その図書館の、ひいてはその大学の教育研究支援の質を測る一つの指標でもある。人事記録の信頼性が疑われる事態となったからには、東大事務当局は、これを機に少なくとも図書館職員の司書資格については確認をすべきではないか。
さらに、司書資格だけでなく、学歴や研修受講歴の記録としても杜撰さが明らかになった。人事記録は、組織の人事管理の根本となる個人データであり、約20名という小さな母数で2割以上に間違いや齟齬が発見されたということでは、東大の「事務」の質が問われかねない。
事務当局はこの実態を真剣に受け止め、人事記録の記載内容の精度の向上と維持に取り組むべきである。