かわら版2015‐4号(2015/2/3)が発行されました。

こちらからダウンロードできます。⇒かわら版2015-4「軍事研究禁止の原則を再確認しよう」20150203
「軍事研究禁止は大学人の社会的責任」
       ―池内了氏を講師に招いて―

第10回ランチョンセミナー1月21日、池内了氏(宇宙物理学)を講師に招いて開かれたランチョンセミナー「急進展する、軍学共同」は、その直前に発信された報道によって軍事研究に無自覚ではいられなくなった東大の教職員・院生・学生にとって、実にタイムリーな企画となった。短時間ながら、現在の日本で行われているあらゆる研究が置かれている状況が、池内氏によって要領よく説明され、大学の人間としてどのようにふるまっていくべきか、その見解が披露されるとともに、考える素材が提供された。
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アジア太平洋戦争後の日本では、戦争放棄が社会の基本通念として原則的にではあっても維持され、学術研究分野においても、科学者たちは日本学術会議において2度にわたり軍事目的の科学研究を行わない決議を採択し、その意味では日本は稀有な国であった。
しかし、特に2006年、防衛庁(当時)の組織改編によって「技術研究本部先進技術推進センター」が発足して以降、民間の先端技術研究の調査とそれの取り込み・共同研究体制が推進されるようになる。アメリカ国防総省によるDARPA(ダーパ)方式といわれる方法で、軍側からの調査と資。金提供による共同研究である。研究者にと
っては、自らの研究成果が思いもかけない軍事利用に発展する可能性と現実が飛び込んでくる事態が展開している。
軍事に転用可能な民間研究への働きかけの動きは防衛省に限らない。2014年度、内閣府の「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)」による公募研究支援、経済産業省によるアメリカ国防総省主催のロボコンへの参加勧誘などがみられる。防衛省自身も新しく「技術管理班」を設置して、民間の研究をしっかり把握するとともに、防衛省独自の競争的資金提供制度を立ち上げる方針であるという。大学の運営費交付金や科学研究費補金などの自由な基礎研究の予算の減額に対して、こうした明らかな軍事転用を視野に入れた研究への重点的資金投入は、近年の政府の「戦争できる国」への体制づくりと明らかに連動している。
こうした状況と予想される今後の展開に対しては、研究のデュアルユース(民生利用と軍事利用)を意識し、自らの研究の目的を常に振り返って、成果を軍事に利用することは許さないという姿勢と、最後まで見守る科学者としての社会的責任を堅持すること。学問の自由にも節度があるということ、軍事研究には公開性はないということ、自由な基礎研究への資金配分と成果公開の体制強化を要求していくこと、等々のことを確認することが重要であるという見解が示されたのである。
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どのような時代的状況にあるにせよ、戦争は遂行してはならない事態であることを確認し、先の戦争の際の科学者たちの反省を繰り返さない知恵と工夫、行動が必要であろう。被害者になることは勿論、加害者になる苦しみも味わいたくはないと思う。軍事研究に対する大学としての姿勢の確認が今一度必要である。
宇宙物理学ご専門の池内氏には、宇宙空間で展開されようとしている軍事安全保障上の事態についてもっとお話を伺いたかった。宇宙は、まさに私たちの学術的ロマンの空間であり続けてほしい。
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非常勤職員の実態を訴えることが大切
~初めての全大教非常勤職員交流集会に参加して~

昨年12月13日に神戸市で開かれた全大教の非常勤職員交流集会に、短時間勤務職員部会より1名の方(教養職組)を派遣しました。そのレポート(要旨)です。*詳しいレポートは女性部発行「ひまわり」275号に掲載。
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全大教の非常勤職員部会として一堂に会するのはこれが初めてです。運営側の役員と、それ以外の各大学単組からの参加者合わせて28名。初めてこういう場に参加したという方や、日頃のやりきれない思いを吐露する方など、実態報告ではリアルな声が耳に残りました。
「今の大学には人を育てる力がない。質が落ちている。このままでは10年くらいで崩壊してしまう」「大学の常識は民間の非常識」「大学は人を見ているのか、お金を見ているのか」「正規職員が減っているのに仕事は減るどころか増えている」「仕事の責任や量と給与が見合わない」「給料が細かく複雑化してきて、パート同士でも賃金の話がしにくい」等々。
確かに待遇の複雑化で共通の意識を持てないむつかしさを感じていますが、だからこそ分かっている者同士の愚痴に留まらず、知らない人たちへ非常勤職員の実態を訴えかけてゆくことが重要だと思わされました。