「軍事研究に関する東京大学教職員組合(東職)声明」(2017年5月)を改めて掲げる

防衛省による「安全保障技術研究推進制度」2次募集が行われている(締切11月13日)。この制度は、防衛装備品などの開発につながる基礎研究を進めるための防衛省による研究助成制度で、昨年度に比べ応募件数が大幅に減少したことから、初の2次募集を実施している。
これまで「防衛省の研究助成には応募しない」としてきた国立天文台は、一転して防衛省の助成制度が使えるよう、方針転換を検討していると報じられた(東京新聞9月10日付)。ただし、その後の対応に関しては、いまだ伝えられていない。

防衛省の研究制度に対しては、2017年に日本学術会議が「軍事研究は行わない」とした過去2回の声明を継承すると発表しており、また今年3月には日本天文学会でも「安全や平和を脅かすことにつながる研究は行わない」とする声明を出している。

国立天文台は、東京大学の天文台として出発し、発展・拡充してきた歴史を持つ。それゆえ我々としても、その動向は注視せざるを得ない。
そこで、2017年に発表した下記の声明「大学での軍事研究に反対し、真に人類の平和と福祉に貢献する東大を」をあらためて高く掲げ、国立天文台及び東京大学に対し、将来にわたり軍事研究を行わないよう強く求める。同時に東職は、そのために力を尽くす所存である。

2019年10月31日
東京大学教職員組合 執行委員会

軍事研究に関する東京大学教職員組合(東職)声明

大学での軍事研究に反対し、真に人類の平和と福祉に貢献する東大を

■東職は日本学術会議による「軍事的安全保障研究に関する声明」を全面的に支持する。

日本学術会議は今年3月24日に「軍事的安全保障研究に関する声明」を発表しました。その中で、まず1950年と1967年に発表した「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」
旨の声明を「近年、再び学術と軍事が接近しつつある中」継承することを確認しています。
そして具体的には2015年に発足した防衛装備庁による「安全保障技術研究推進制度」は政府による研究への介入が著しく、問題が多いと断じています。

さらに、声明は大学が「開かれた自由な研究・教育環境を維持する責任」から、大学で行われようとする研究が軍事研究かどうか審査する制度を設けることを求めています。これには各々の大学がこの問題にどういう立場を取るかを明確にすることが必要となります。

東京大学教職員組合は大学での研究が自主・自律・公開の原則の下で行われるべきであるとする立場から、この声明を強く支持するものです。

■軍事研究禁止の立場を堅持する東京大学の伝統を守ろう。

東京大学は戦後、南原繁総長のもとで「軍事研究に従事しない、外国の軍隊の研究は行わない、軍の援助は受けない」という三原則を確立し、それは歴代総長に受け継がれてきました。

1959年、1967年に東京大学評議会でこの原則を確認しています。さらに1969年3月には当時の加藤一郎総長代行と東職の間の確認書でこの原則が明文化されています。最近では2015年1月15日当時の濱田総長が「東京大学における軍事研究の禁止について」という見解を発表しこれらの原則を確認しています。

東京大学はこのように戦後一貫して軍事研究禁止の立場を貫いてきました。私たち東職は今一度この原則を東京大学で働き学ぶすべての皆さんと確認し合うことが大事だと考えています。

■防衛装備庁による安全保障技術研究推進制度への応募は認められない。

安全保障技術研究推進制度は今年度予算額を110億円に増額し5月末締め切りで募集が行われています。学術会議声明が示すとおり、この制度に基づく研究が大学で行われることは「軍事研究の禁止」の原則に反することは明白です。

東職はこの制度への応募に強く反対します。東京大学の研究者は一致して同制度に応募しないことで研究者の良心を示すことが出来ます。それぞれの職場から皆さんがこのことを訴え、どの部局からも応募がない雰囲気を作り出そうではありませんか。

■人類の平和と福祉の発展に資する研究を進めるため、今必要なのは基盤的研究費の大幅な増額。

安全保障技術研究推進制度は、大学運営費交付金が削減され続け、研究予算の競争的資金への依存度が高まっている中で導入されてきました。大学が再び軍事に取り込まれる危険な状況が生じています。この状況を打ち破る必要があります。

2003年に定められた東京大学憲章は

「研究が人類の平和と福祉の発展に資するべきものであることを認識し、研究の方法及び内容を絶えず自省する。東京大学は、研究活動を自ら点検し、これを社会に開示する」

と謳っています。その実現のためには、大学の研究予算の構造を根本的に改め、大幅な

運営費交付金の増額等により、目先の成果にとらわれず腰を据えて研究が継続できる環境を東京大学に作ることが必要です。東職はそのために全力を尽くす決意です。

2017年5月 東京大学教職員組合