緊急事態条項は独裁政治への突破口  憲法違反の安倍政権の暴走を許すな !

2015年12月11日戦争法廃止をめざす東大有志の会アピール
全文はこちらからダウンロードできます⇒有志の会ビラ7号1210

1.改憲による緊急事態条項や共謀罪の新設に積極的な安倍政権
戦争法案反対運動が大きく盛り上がり始めていた2015年5月7日,衆議院の憲法審査会は実質的審議にはいりました.環境権や財政規律条項,プライバシー権や憲法裁判所の設置などが議論された中で自民党,公明党,維新の党,次世代の党が一致して必要性に言及したのは「緊急事態条項」でした.自民党は,緊急事態条項を優先的な改憲項目とし,安倍首相は11月11日の参院予算委員会で,「国民の安全を守るため,国家や国民がどのような役割を果たすべきかを憲法に位置付けることは極めて大切な課題だ」と強調し,改憲による緊急事態条項の新設を重視する考えを示しました.またその直後に発生したパリのテロの際にフランス政府は非常事態を宣言し,令状なしでの家宅捜索や過激思想の持ち主と判断した者の自宅軟禁を命じたり,人々の夜間の外出や集会を禁止しました.これに呼応するように自民党の谷垣幹事長は来年5月のサミット開催に関連して共謀罪の新設を含むテロ対策に言及しています.

2.首相に権限を集中し,個人の権利を制限する緊急事態条項
緊急事態条項は,外部からの武力攻撃,内乱等による社会秩序の混乱,地震等による大規模自然災害などの際に首相の権限を強化することを柱としています.憲法秩序を一時停止して政府に全てをゆだね,個人の権利も制限することができるようになります.日本国憲法には,戦前の軍部による独裁政治への反省を踏まえて緊急事態条項をいれなかったという経緯があります.
神戸の震災や東日本大震災の被災地で支援活動を行なった弁護士は,被災地で必要なことは首相への権限集中より現場に権限を下ろすことであると述べ,そのための法整備は災害対策基本法などで既になされていると指摘しています.被害が拡大した要因は法的不備ではなく,それを適用するための平常時の準備不足にあったと言えます.現場での事前の備えやマニュアルによる準備のないまま、非常時にトップが権力的に指示を出しても混乱を招く危険性が高いのです.また,3.11震災と原発事故時の官房長官だった民主党の枝野幹事長は憲法上で問題になる点は,法律ではできない国会議員選挙の延長だけであると述べています.

3.テロを口実とした共謀罪新設は市民運動弾圧の合法化
共謀罪は,「重大な犯罪にあたる行為を『団体の活動』として『組織により』実行しようと共謀すると,実際に行動を起こさなくてもそれだけで罰する」という内容です.2000年11月15日に国連総会でマフィアの組織犯罪などを対象とした「国際組織犯罪防止条約」が採択されたことを契機に検討が進められてきました.しかし,国内法との整合性や,「重大な犯罪」の内容があいまいで市民運動の不当な弾圧につながる危険性があることなどから,今まで3回も廃案にされています.テロとは無関係に検討されてきたものであり,テロ防止を口実とした市民運動の弾圧の合法化を許してはなりません.

4.緊急事態条項は独裁政治への突破口,戦争法廃止と立憲主義政治の確立を
安倍政権は世論を欺きやすい(と彼らが考える)大規模な自然災害への対処を口実に緊急事態条項を導入し、立法権と行政権を手にすることを狙いとしている可能性が大きいのです.違憲の戦争法を成立させたうえ,憲法53条に基づく野党の臨時国会召集の要求を拒否して憲法違反を重ねている安倍政権の暴走は,独裁政治への道を開く危険があります.
第一にすべきことは,違憲の戦争法をリセットし,踏みにじられた立憲主義を回復・確立させることです.私たち東大有志の会も進めている「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の戦争法廃止の統一署名もまさにその点を要求するものです.残念ながらマスコミにおける戦争法の関連報道は激減しましたが,私たちは2015年夏のできごとを記憶し続け,粘り強く運動を積み重ねていきます.そして,2016年夏の参議院選挙で戦争法廃止をめざす議員が過半数を制するようにしましょう.