一般市民が監視の対象となり、もの言う自由を奪う 共謀罪(テロ等準備罪)は廃案に!

2017年5月6日 戦争法廃止をめざす東大有志の会からのお知らせです。
チラシはこちらです⇒有志の会ニュース(共謀罪)

安倍政権は、「戦後レジームの脱却」をスローガンにして戦後民主主義・平和主義を覆し、戦争のできる国へ向けて次々と手を打ってきました。今国会で成立を目指している共謀罪(テロ等準備罪)は安倍首相の悲願である9条改憲と合わせてその仕上げ段階にもあたるものです。
政府は、「国際組織犯罪防止条約」批准やテロ対策のためなどと説明し、犯罪名も「テロ等準備罪」に変えました。しかし実際に犯罪行為を行わなくても相談や計画したことを罪に問うという大本に変更が加えられたわけではありません。過去3回廃案になった「共謀罪」そのものです。
今の刑法は既遂の犯罪は罰しますが、「相談・計画」を罪の対象にしていません。この大原則を覆す共謀罪(テロ等準備罪)は、思想・内心・表現の自由を保障する憲法に違反するものであり、認めることは出来ません。
共謀罪(テロ等準備罪)の処罰対象はテロとは関連のないものがほとんどで、対象となる「組織犯罪集団」の定義もあいまいです。すでにある盗聴法などと一体で運用され、警察などの判断で幅広い市民運動や労働運動などが監視・弾圧の対象になる危険はぬぐえません。
テロ対策には効果は少なく、それ以上に組織犯罪とは関係のない市民にまで監視が強化され、少しずつもの言う自由が奪われ、自由闊達な意見表明や議論から生まれる社会の批判力や正常な判断力が衰退していくことが懸念されます。
戦前、思想・言論弾圧に猛威を振るった治安維持法によって、労働運動などの社会運動だけでなく、文化人、宗教者、学生など多くの市民が弾圧され、モノが言えない戦争国家がつくられていったことは歴史の事実です。同じ過ちをくりかえしてはなりません。

Q:共謀罪(テロ等準備罪)新設は「国際条約批准」のために本当に必要なのか?
政府は新設しないと「国際組織犯罪防止条約」を批准できないと説明しています。しかしこの条約は「金銭的利益その他の物質的利益を直接または間接に得るため」のマフィアなどの越境的集団の犯罪を防止することを目的としたもので、「目標が純粋に非物質的利益にあるテロリストグループや暴動グループは原則として組織的な犯罪集団に含まれない。」と国連の立法ガイドにも明記されています。つまり条約の批准に共謀罪(テロ等準備罪)は必要なく、安倍首相の説明は私たち国民を欺くものです。
Q:共謀罪(テロ等準備罪)はテロ対策が目的なのか?
安倍首相は、共謀罪(テロ等準備罪)が2020年の東京五輪・パラリンピックを控えてテロ対策に万全を期すために必要な法案であり、今国会における成立を目指すと言っています。しかし法案の正式名称は「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」であり、当初は条文にも「テロ」の表記はひとつもありませんでした。野党の追及を受けて条文に「テロ」の言葉が加わったという経緯を見ても、この法案の本当の狙いがテロ対策ではないことは明らかです。
Q:なぜ過去3回(2003年、2004年、2005年)も廃案になったのか?
捜査当局が未遂も予備も準備がなくても、「合意」があったと判断した時点で犯罪とし処罰の対象とするためには、外部からでは分からない内心を調べることになり、市民の内心の自由、正当な言論・表現を侵害する危険性が高く、憲法に違反するものだからです。当時の刑事局長の「一定の条件が整えば『目配せ』でも成立する」という答弁は、犯罪を実行した段階で罪とする現刑法の原則に反する共謀罪の性質を象徴する発言です。
Q:一般人は対象になるのか?
政府は呼び方を「テロ等準備罪」と変更し、「対象となる犯罪要件を半数程度に絞り、処罰対象を『組織犯罪集団』に限るから一般人は対象にはならない」と説明しています。しかし、処罰対象となる「組織犯罪集団」の定義はあいまいで、なにを処罰対象とするかは捜査機関等権力の判断に委ねられています。盛山法務副大臣の衆院法務委員会での発言「一般の人が(捜査の)対象にならないということはないが、しかし、ボリュームは大変限られている」も一般人が捜査対象となる可能性を示唆しています。
Q:どのような危険性があるのか?
「組織犯罪集団」の定義があいまいなため捜査機関の裁量で、テロと関係のない市民団体などにも適用され、「犯罪の計画との関連のない日常的行為」を恣意的に準備行為と判断される危険性があります。金田法務大臣は「キノコや鉱物採取なども資金源となる場合は対象となる」と述べていることからも、政府の政策に疑問を投げかけたり、原発や公害被害者などやむにやまれず声を上げようとする人たちを押さえつけるために、捜査機関が意図的に「日常的行為」を準備行為と判断する恐れもあります。沖縄では、辺野古基地反対運動の中で 共謀罪の先取りを思わせる事態が進んでおり、座り込みの現場にいた人や、その場にいなくてもカンパしようと話し合いをした人すらも摘発される危険性もあります。
捜査機関が犯罪の着手前の段階で摘発するためには、日常的な監視を「私は犯罪にもテロにも関係ない」と思っている人も含め広範囲に行うことになります。監視の手段として盗聴や密告なども日常化されるでしょう。たとえ直接話をしなくても暗黙の了解や、SNSの一つであるLINEの既読スルーのようなことだけでも「合意」とみなされる危険があります。監視されていると意識することは、個人の内心の自由を束縛し、自由にものを言えない戦前のような社会を作り出してしまいます。

戦争法廃止をめざす東大有志の会 (代表 東京大学教授 小森陽一)
連絡先: 〒113−0033 東京都文京区本郷7−3−1 東京大学教職員組合気付

共謀罪の廃案を求める集会に参加しましょう !
★5月9日(火)12時〜13時 共謀罪の廃案を求める国会行動
場所:衆議院第二議員会館前
★5月9日(火)13時半〜   共謀罪の廃案を求める院内集会
場所:衆議院第二議員会館多目的会議室
共催:共謀罪NO!実行委員会/戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会