かわら版2016‐4号(2016/11/25)が発行されました

ダウンロードできます⇒かわら版2016‐4号 大隅先生(元理職),祝ノーベル賞ご受賞!

「本当に役に立つことは
       100年後かもしれない」

―大学での基礎科学研究のあり方について思う

今年度のノーベル医学生理学賞を大隅良典さんが受賞されました。大隅さんは以前理職の委員長を務められたこともあるように我々とも縁のある方です。受賞後の記者会見で述べていた次の言葉はとても示唆的です。

 私は「役に立つ」という言葉がとっても社会をだめにしていると思って います。数年後に事業化できることと同義語になっていることに問題が ある。本当に役に立つことは10年後、あるいは100年後かもしれない。 社会が将来を見据えて、科学を一つの文化として認めてくれるような社 会にならないかなあと強く願っています。  (*)

我々がどのような大学を目指すのかを考えるときに大事な提起だと思います。運営費交付金が減らされ続け、研究が「競争的」資金に頼らざるを得なくなっています。そこでは5年程度の短期間にいかに多くの成果が得られるかばかりが問題にされ、「10年経ってもうまくいくかどうかわからない」というような申請書はまず採択されることはないでしょう。
土作りをせずに収穫を急ぐばかりでは、やがては作物そのものが育たなくなるように、新しい研究が生まれ育っていく風土が失われていくように思います。
東京大学ビジョン2020では「21 世紀の地球社会に貢献する「知の協創の世界拠点」としての使命を担う」とうたっています。その実現のためには、基礎科学にじっくりと腰を据えて取り組むことが出来る環境を作ることが大事なのではないでしょうか。%e3%83%8e%e3%83%bc%e3%83%99%e3%83%ab%e8%b3%9e%e3%81%ae%e3%83%a1%e3%83%80%e3%83%ab

東京大学教職員組合2016年度執行委員長  坂本 宏

(*) The Huffington Post 2016年10月3日「「社会がゆとりを持って基礎科学を見守って」ノーベル賞の大隅良典さんは受賞会見で繰り返し訴えた」より

理職組合員からのお祝いメッセージ

 大隅良典東京工業大学栄誉教授が、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。後に続くわたしどもにとっても大変嬉しいご受賞です。おめでとうございます。
大隅先生は、東京大学教養学部を卒業後、同大学院今堀和友教授のもとでタンパク質の生合成を研究し、1974年に理学博士を取得。その後、アメリカのロックフェラー大学のエデルマン教授(免疫に関わるタンパク質の研究でノーベル賞)のもとに留学し、研究室の新しいテーマである受精の研究をなさいました。アメリカ滞在中に、東京大学理学部生物学科の安楽泰宏教授にスカウトされ、1977年より1988年まで理学部の助手・講師をつとめられました。
理学部在籍中に、ノーベル賞受賞につながる、酵母の液胞の内部を酸性に保つ役割を果たす因子を研究。ATPのエネルギーを使って水素イオン(プロトン)を液胞内に汲みこむ因子で、プロトン-ATPaseとよばれるものです。その後、東京大学教養学部の助教授となり、酵母の液胞を舞台としたオートファジー(auto=自分・自身、phagy=食べる、自食作用)現象を顕微鏡観察により(再)発見されました。細胞が作ったものを分解してリサイクルするための重要な機能です。酵母の特性を駆使し、オートファジー現象に関係する遺伝子を次々と発見、その役割を明らかにされました。これらの遺伝子は、哺乳類のヒトや植物にもよく保存されていたため、多くの生物を対象とした研究のきっかけとなりました。オートファジーは、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病などとも深く関係するので、医学的にも大変重要です。
たった1人で始められた研究が、爆発的に大きな研究分野に発展したのです。
理学部在籍中は理学部職員組合員で、1983年度前期には理学部職員組合委員長もつとめられました。理学部時代は、本郷三丁目交差点近くの「白糸」などでよく飲んで%e3%82%84%e3%81%8d%e3%81%a8%e3%82%8aおられました。セミナーの当番前夜に、発表予定の論文のコピーを握りしめ、「これをどうしてくれる!」などと叫びながら、ピッチを上げておられた姿をお見かけしたこともあります。
大隅先生は、今でも最前線で研究されています。今年は無理かもしれませんが、実験室に戻り更に成果をあげられることと期待しております。
もういちど、おめでとうございます!  (寺島一郎/理学部教授)

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