かわら版2015‐6号(2015/3/10)が発行されました(2p)

ダウンロードできます。⇒2015-6「不利益変更はきちんと説明を」20150310

戦後70年、従軍慰安婦問題を考える―2.11集会 

去る2月12日木曜日、思想と信条の自由を守る2.11集会(第11回東職ランチョンセミナー)「日本軍「慰安婦」問題をどう考えるか」(主催:東京大学職員組合・東京大学史料編纂所職員組合)が開催されました。講師はこの問題の第1人者吉見義明氏(中央大学教授)。37名参加者とともに、活発な議論が行われ盛会のうち終了しました。その報告です。******************
冒頭では、吉見氏の著書を「捏造」と断定した元衆議院議員桜内文城氏との裁判の経緯・状況、「慰安婦」問題に関する国会における首相の発言、世界の認識など、現状の紹介。ついで、この問題を考える3つのポイント、国際法上の奴隷制の要件、「慰安婦」の置かれた状況、徴募形態が解説されました。
 「奴隷制の要件」は、「所有権にともなう権能」の行使であり(「所有権」そのものではない)、行使される人の「地位」だけではなく「状態」も含まれ、「自由の剥奪」状態にあったか否かが問題となる。
 「慰安婦」とされた女性たちは、「居住の自由」・「外出の自由」・「廃業の自由(自由廃業の権利)」・「拒否する自由」などを奪われて、無権利状態にあった。
 徴募形態も「軍・官憲が選定した業者」による「略取・誘拐・人身売買」などであった。インドネシアなどでは「軍・官憲による略取」もあった。
具体的な資料を挙げながら、じつに明快に説明していただくことで、そもそも奴隷制とはどういった状態を指すのか。「慰安婦」とされた女性たちは、実際にどのような立場・状況に立たされていたのか。これらの点にこそ、「慰安婦」問題を考える際の本質があることを学ぶ機会が得られたことは大変大きな成果でした。
ひとつ残念な点をあげるとすれば、時間の関係で、日本国内の公娼制度と「慰安婦」制度との十分な比較をうかがえなかった点です。氏によれば、公娼制度は1920・30年代すでに事実上の奴隷制度とひろく認識されていたと言います。とすると、国内案件では性奴隷認識があるものの、植民地案件ではそうではない、というご都合主義の二重思考があったことになります。この点を明らかにするためにも、公娼制度の実態と人びとの認識、そしてその時期的な変化などをさらに突っ込んでうかがえなかったのは、残念でした。報告・討論の時間を一分一秒でも長く確保するため、運営側がより一層の工夫をする必要を痛感した次第です。
この問題は、被害者の名誉回復や性暴力の廃絶、歴史認識の問題として、今後も国内外でさまざまな議論がつづくと思われます。ランチョンセミナーでも、いずれかの機会に再び企画したいと思います。